世の中、Massive inequalityになっている。社会はすでにEqual opportunityではない、ということはサンデル教授のご指摘どおりだ。日本でも経済格差は、当たり前になり、ますます広がっている。おひとり5百万円のクルーズ旅行がシニアにバカ売れする一方で、医療費も払えない老人が食費にも困り、ひっそり家で死んでいく。
日本は、人口減少社会なのに、ホームレス人口は増加しており、最近では女性のホームレスも目に付く。彼らの友達は猫ばかり。いまもむかしも不公平な社会だが、不公平感の摩擦熱はあがるばかりだ。Economic problemがemotional problemになり始めている。
「感情のもつれが原因、という原因の事件が増えている」
人間は感情の動物。恐竜時代は、食うか食われるか。弱肉強食なわけだが、結局、人間社会も同じようなものだ。経済社会ではlopsided dealがまかり通る。global economic hierarchiesがますます拡大している。大企業のトップの年収は30億円レベルだが、日本では大卒でも年収2百万円がごろごろいて、世界には年収が数十ドルという人もたくさんいる。新種のグローバル封建時代だ、という話もある。
人間の金銭的価値の差が、10倍、100倍どころか、1000倍以上になっている。せめても、暖かい人間関係を望むが、これだけ格差となると、関係がおかしくなる。昔の長屋の助け合い的なものが復活すればいいのだが、そうもいかない現実があるようだ。
「フクシマの食材は大丈夫か」
放射能線量計が日立やセイコーなどから続々販売され始めて、「しっかり計測しているから、安心です」とアピールした。この線量計の核となるパーツは特殊な金属結晶だが、米国と旧ソ連でしか製造していないので、日本からの注文が殺到した。安い結晶と高い結晶があり、価格も精度も違う。販売業者から事情を聞いた。
「最初はなかなか、売れなかったのですよ」
「農民も、スーパーも、JAも、市庁や県庁も、はじめは、他人任せで、誰も検査しようという気がなかったのですよ。でも、いまは、アピールのために需要殺到です。ああ、農民のこころもここまでに落ちたか、と悲しくなりました。命をつなぐ食べ物への責任感をいちばん持っているのは農家だと信じていたのですが」、と語っていた。真意はどうであったのだろうか。
「そんなこと言われても」
災害もあり、経済的なシビアさもあり、生きるためには仕方なかったのであろう。だが、危険を感じて出荷しなかった農家もいるわけであり、危険を知りつつ出荷した人のこころが心配だ。だから、「国や県がすべて買い上げて、検査してくれれば」、という声もあったが、実現しなかった。
「ならば、どうしたらよかったのか」
poor versus poorの構図から、rich versus poorへの転換という手もある。昔から、金持ちにおごってもらえ、という学生標語があるが、それだ。東電にクレームしても、電力代の値上げになるが、そもそも原発で利益をあげたのは、東電だけではない。原発に関わった業者は五万とある。たとえば、総合商社はウランなどの資源ビジネスで相当に利益をあげた。そしていま、原油や天然ガスで、空前絶後、昔の10倍以上の利益をあげている。
「検査装置、1台3百万から6百万円、総合商社1社あたり、1,000台ほど寄付してください」
総合商社にかぎらず、原発ビジネスを推進していた企業の多くは、いまは巨大な利益をあげている。このような超優良企業は、社会的貢献にたいへん敏感であるから、フクシマのみならず、放射能問題で困っている人たちは、相談にのってもらえる、かもしれない。